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●本●
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この本は買ってからしばらく読む気がしなくて放っておいたんです。敬愛する梨木さんの本なんだけど、なんとなく心が求めてなかったというか。でも、木の実が熟すみたいに、本もちょうど自分にとって読み頃になるときが訪れる、と思うのです。腰が悪くて寝ているしかなかった日々の中でふと読んでみたくなり、読み出したら、しとしとと心に染み入るような作品で、ああ、やっぱり梨木さんの文章だなあって思ったわけです。梨木さんがカヌーを始めて、カヌーをこぎながら、水とふれあいながら、いろいろなことを思い感じる。それをエッセイにまとめてあるのだけど、最後の1ページを読み終えると、ほおっと心が包まれるような、よし、生きていこうって気にもなる。梨木さんがとっても健全な精神の持ち主だということが、こういう効果を与えてくれるんだと思う。しかも、いつものことながら、ああ、そうなんです!という共感の連鎖が、この作品にもあって、まず表紙のカヌーの写真が、星野道夫さんのものであるということで、涙が出そうになっちゃうし、星野道夫さんのことを梨木さんが本の中で「明るく、豊穣な孤独」を生きた人だと表現しているところにもうるうるしちゃうし、アーサー・ランサムやメイ・サートンや、うさぎの大好きな作家も登場したりで、結局、とどのつまり、やっぱり、梨木さんの作品の虜に改めてなってしまうのだ。静かな、静かな、まるで水面の上を音もなく進むカヌーのような作品なんだけど、読み終えたあとの感動は水紋のようにいつまでもエコーすると思う。 |
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